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胃レントゲン検査所見欄の解説


バリウム飲むの好きな人、いますよね

いさか内科・消化器内視鏡クリニックの井坂です。

以前のブログで、鼻から挿入する内視鏡:経鼻内視鏡について解説しましたので、今回は胃レントゲンに関連した内容を投稿したいと思います。
健診や人間ドックなどで胃レントゲンを受けると結果表の中の所見欄を確認されると思います。
今回はそこによく記載されている所見について解説したいと思います。

【胃アレア粗造】
胃の粘膜には一定の模様があり、これをアレアといいます。
炎症があるとこれが不規則になることがあり、これをアレアの粗造(不整)といいます。
悪性を示唆するものではありませんが、ピロリ菌による慢性胃炎を示唆することがありますので、放置せずに精査として内視鏡検査を受け、その結果により速やかにピロリ菌の除菌を行うことをおススメします。

【ニッシェ】
ニッシェとは壁をくぼませて作った飾り棚の意味からきており、粘膜の陥没した部分にバリウムがたまった所見と似ていることから呼んでいます。
潰瘍や潰瘍を伴った腫瘍の可能性がありますので、内視鏡による精査をおススメします。

【潰瘍瘢痕、十二指腸球部変形】
これらは以前に発症した胃潰瘍もしくは十二指腸潰瘍の傷跡を疑う所見です。
傷跡ですのでずっと残ります。(浅い潰瘍の場合は経過によってほぼ目立たなくなりますが)
十二指腸潰瘍は球部という胃と連続した部位でよく発生します。
そこに発生した潰瘍が治癒して粘膜がひきつれた結果、十二指腸球部の変形として捉えられるのです。
潰瘍はピロリ菌に感染したことで発生していることが多いので、潰瘍の既往を自覚していない場合は二次検査として内視鏡検査を受け、ピロリ菌の感染があれば速やかに除菌を行うことをおススメします。
ピロリ菌の感染が持続したままだと潰瘍の再発・胃がんの発生リスクが高いままとなってしまいます。
なお、既に除菌をした方ならば、胃レントゲンではなく、内視鏡による定期的なフォローが望ましいです。
早期の胃がんを見つけるのには胃レントゲンより内視鏡の方が圧倒的に適しているからです。

【ひだ集中】
これも潰瘍の傷跡に由来する所見です。
潰瘍が治癒する過程で周囲の粘膜が潰瘍の中心に向かって吸い寄せられるように集まってきて潰瘍が塞がります。
これを粘膜集中像といいます。この所見は良性の潰瘍瘢痕でも見られますが、潰瘍を伴った腫瘍であることがありますので、一度は内視鏡による精査をおススメします。

【ひだの肥厚】
胃の粘膜にはひだがありますが、これが腫れて厚ぼったくなった状態をひだの肥厚と言います。
ピロリ菌による活動性胃炎で見られる所見ですので、内視鏡による確認と除菌を強く推奨します。


【壁外性圧排】
これは胃自体に異常があるわけではありません。
胃の周囲の臓器(肝臓・大腸・脾臓・膵臓・腹腔内リンパ節など)にできものがあって、それが胃を圧迫している状態です。
この場合は内視鏡で胃の中から調べても原因がわかりませんので、CTや超音波検査によってその原因を調べていきます。

【憩室】
胃や十二指腸の壁の一部が外側に向かって袋状に拡張した状態です。
先天性であったり、潰瘍が治癒した結果として形成されたりしますが、基本的に問題ありません。

【食道裂孔ヘルニア】
食道が横隔膜を通り抜ける間隙である食道裂孔から、本来腹腔内にあるべき胃が胸腔内に入り込む状態を言います。
高齢者に比較的多くみられる所見です。
胃酸などの胃内容物が食道へ逆流し、逆流性食道炎を起こしやすい状態ですので、胸やけ・げっぷ・嘔気・呑酸などの症状があればクリニックを受診してください。

【萎縮性胃炎・肥厚性胃炎】
これらはピロリ菌が関与している慢性胃炎の所見です。
除菌をしても、この萎縮性胃炎はすぐには軽快しませんので、しばらく指摘されることがあります。
肥厚性胃炎の場合は、まだ除菌されていない活動性胃炎を疑う所見ですので、是非とも内視鏡による精査を受けてください。

【ポリープ】
胃ポリープは粘膜の表面が部分的に盛り上がった所見の総称です。
これに関しては今後のブログで改めて詳しく解説します。

以上、健診やドックで行われる胃レントゲン検査の所見について解説しました。
基本的には、所見が書いてあっても“要精密”ではなく“軽度異常”や“経過観察”の評価になっていれば過度に心配することはありません。
それでも気になる方は結果表を持参して頂ければ、ご説明しますのでお気軽に受診してください。

いさか内科・消化器内視鏡クリニック 院長 井坂利史

日本内科学会認定       内科認定医
               総合内科専門医 
日本消化器病学会認定     消化器病専門医  
日本消化器内視鏡学会認定   消化器内視鏡専門医 
日本消化管学会認定      胃腸科専門医 
日本ヘリコバクター学会認定  ピロリ菌感染症認定医