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眠った状態で受ける内視鏡:鎮静剤について


いさか内科・消化器内視鏡クリニックの井坂です。

内視鏡検査を受けに来院される方に鎮静剤の使用を希望される方が多くいらっしゃいますので、今回はこの鎮静剤について説明します。
鎮静剤というより麻酔薬と言ったほうがなじみやすいかもしれません。
内視鏡検査は人間の身体にどうしても負担が掛かってしまいます。
私は消化器内視鏡専門医として研鑽を積んできましたが、患者様の中にはどうしても反射の強い方や敏感な方がおられます。そういった方では鎮静剤を使用することで楽に受けて頂けます。
半分眠った状態で検査を受けることができるので「気付いたら検査が終わっていた」ということになります。

具体的には上記の米国麻酔科学会が定義する”中等度鎮静=意識下鎮静”に該当するレベルの鎮静を行います。
問いかけや刺激に反応でき、自発呼吸も維持されるレベルになります。
よく患者さんから“全身麻酔”という言葉を聞きますが、医療者がいう“全身麻酔”は上記の表の一番右の“全身麻酔”に該当し、呼吸が抑制され、人工呼吸器に繋げる必要のあるレベルの深い鎮静なのでクリニックでは現実的ではありません。
では鎮静剤を使用することによって生じるメリットとデメリットを整理してみましょう。
メリット
① 眠っている間に検査が終わる
鎮静剤を使用することによってほぼ眠っている状態で検査を受けることが可能になります。
そのため、苦しい思いをしたくないという方や、痛いのが苦手という方には、鎮静剤を使用するメリットは大きいと言えます。
② 病変の見落としを防げる
患者さんがオエ~と反射がある状態では、胃が動いてしまうので微細な病変を見つけにくくなります。
医師側もなるべく早く終わらせてあげたいという気持ちになってしまい、見落としが出てしまう可能性があります。鎮静剤を使用すれば嘔吐反射がない良い条件下で落ち着いて観察することができます。
デメリット
① 車での帰宅ができない
鎮静剤を使用した場合には、検査終了後に車やバイク、自転車を運転して帰宅することは非常に危険であるため禁止です。交通手段が車しかない方の場合、タクシーを利用するなどといった交通の手配をする必要があります。
② 副作用が発生する恐れがある
鎮静剤の副作用が起こる可能性はあります。
具体的にはアレルギーや呼吸抑制、血圧の低下などです。
検査中は血圧や酸素飽和度、脈拍等を測定し、変化がないか注意深く観察します。
用いる薬剤
当院では鎮静剤として一般的によく使用されるベンゾジアゼピン系の薬剤を使用しています。
患者さんの年齢・体格・背景(嗜好、服薬歴、既往歴)などの情報をもとに使い分けます。
・ドルミカム(ミダゾラム)
当院の麻酔は基本的にこの薬剤を用います。
この薬の良いところは、半減期(薬の成分の血液中の濃度が半減するまでの時間)が短いため、検査後に麻酔が残りにくいという点です。
欠点としては大酒家の人には効きにくく、脱抑制を生じ、検査中に無意識で暴れてしまうということがあります。
年齢や体格に応じて2-3mg投与で検査を開始し、効果・反応をみながら、不十分と判断されたら適宜追加しています。クリニックという事もあり上限5mgとしています。
・セルシン、ホリゾン(ジアゼパム)
ジアゼパムはアルコール中毒患者の離脱症状を鎮めるために使用される薬剤であり、大酒家でも安全に使用できます。
従って酒量が多い人や、過去の検査で麻酔が効きにくかった方にはこの薬を5-7.5mgで使用します。
欠点としては半減期がやや長いため、検査後も麻酔効果が残りやすい点と投与により血管痛・血管炎を起こすことがある点です。

いずれの薬剤を使用した時でも、検査終了後に必要があると判断した際に拮抗剤を投与し、鎮静作用の遷延による弊害を最小限に抑えるよう臨んでいます。

以上のように、メリット、デメリットを理解したうえで鎮静剤を適切に使用すれば、楽に内視鏡検査を受けることができます。
当院としては、鎮静しなくても苦痛の少ない検査ができることが一番と考えており、基本的には鎮静は行わない方針ではいますが、鼻からの内視鏡でも反射のある方や鼻の通りが狭くて鼻の痛みがつらい方、大腸内視鏡においてはお腹の手術歴のある方や以前の検査でつらかった方には鎮静剤使用を勧めています。
とにかく楽に受けたいという方の要望にもお応えしています。
内視鏡が怖い、以前受けてつらくてトラウマになった、二度とやりたくない、こういった方がおられましたら一度、お気軽にご相談ください。
個々にあわせた方法での内視鏡をご提案致します。

鎮静剤を使用した後は、ベッドでしばらく休んで頂きます