あなたが飲んでいるその便秘薬は毎日飲んでも大丈夫な便秘薬ですか?
便秘薬には様々な種類があります
いさか内科・消化器内視鏡クリニックの井坂です。
便秘の方は便秘で病院にかかるのもなあ・・と考え、薬局で市販されている便秘薬を飲んでいる方が多いかと思われます。
便秘薬には色々な種類があり、中には毎日飲んでいると、効果が落ちてきたり、逆に便秘を悪化させたりする種類もありますので、正しく理解して内服することが望ましいです。
今回は市販薬も含めた便秘薬について解説したいと思います。
まず、便秘薬は効く機序によっておおまかに ①浸透圧性下剤 ②上皮機能変容薬 ③大腸刺激性下剤に分けられます。
① 浸透圧性下剤
【酸化マグネシウム(マグミット)】
大腸内に水を引き込んで、便を軟化することで便通を改善させます。
日本では従来からよく使用されている薬剤です。
高齢者や腎臓の機能の低下した方には成分のマグネシウムが体内に蓄積することがあるので、注意が必要ですが、薬局でも手に入る安価なお薬です。
胃酸分泌を抑制する薬を飲んでいる人では効果が出にくいことがあります。
【モビコール】
水分子と結合し、そのまま吸収されずに大腸まで到達し、便を水でコーティングすることで排便を促す薬剤です。
欧米では以前から第一選択として使用されている薬剤です。
水以外のジュース、お茶、コーヒーなど何にでも溶解して構わない薬ですので、小児用として重宝されます。
また、上述したようにほぼ体内には吸収されないので、他の薬剤との相互作用も気にする必要がありません。
小児用のLDだけでなく、大人用のHDが2022年にラインナップされ、飲みやすくなりました。
【ラクツロース】
大腸で腸内細菌に分解された乳酸、酪酸などが大腸内の浸透圧を上げて、水分を腸内に引き込んで便を柔らかくします。
効果発現が穏やかで、透析患者に対しての有効性や安全性が確認されています。
②上皮機能変容薬
最近、開発された種類の薬剤になります。
【アミティーザ】
小腸の粘膜に作用し、腸管内への水分分泌を促進させて、便を軟化させます。
従来から使用されている酸化マグネシウムより効果が高いです。
小腸が拡張し、それが吐き気として若い女性にみられることがあります。
【グーフィス】
小腸(回腸末端)での胆汁酸の再吸収を阻害して、胆汁酸を大腸に多く流入させる機序です。
胆汁酸により大腸への水分分泌と蠕動運動が促進されます。
大腸の動きが遅延している方に効果が高いです。
悪玉コレステロール(LDL-C)を低下させる作用もあります。
【リンゼス】
これも腸管内への水分分泌を促進する薬剤です。
1日1回食前の内服で、腹痛も伴う便秘(便秘型過敏性腸症候群)の方に適しています。
効果が比較的強く、食後に内服すると下痢してしまう方もいます。
これらの薬剤は長期間使用しても依存性が無いので、毎日内服しても問題はありません。
問題は③の大腸刺激性下剤です。(市販薬の多くがこれに該当します)
大腸刺激性下剤には主に3つの成分があります。
・アントラキノン系・・センノサイド(センナ)、大黄(ダイオウ)
【センノサイド(センナ)を含む薬剤】
センノシド、プルゼニド、ソルダナ、アローゼン、アジャストA、ヨーデル、セチロ、スルーラック、新ウイズワン、コーラック、カイベール
【大黄(ダイオウ)を含む薬剤】
セチロ、大黄甘草湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、大柴胡湯、乙字湯、桃核承気湯、大正漢方便秘薬、タケダ漢方便秘薬、ハーブイン「タケダ」、ナイシトール
・ジフェニルメタン系・・ビサコジル
【ビサコジルを含む薬剤】
コーラック、ヒューラック、スルーラック、ラキサタン、カイベール、レシカルボン坐薬、テレミンソフト坐薬
・ジフェノール系・・ピコスルファートナトリウム
【ピコスルファートナトリウムを含む薬剤】
ラキソベロン、ピコラックス
何が問題かというと
これらの大腸刺激性下剤は連用すると腸の運動を障害し、排便の刺激を鈍感にさせ、便秘を逆に悪化させてしまう弛緩性便秘を引き起こします。
大腸にムチを打って無理やり動かすので、当初は効いていても、段々効かなくなってしまうとイメージしてもらうとわかりやすいかと思います。
この刺激性下剤が悪というわけではなく、飲み方が大事という事です。
具体的には、3日程度排便が無かったら内服するという頓用が正しい用法であり、毎日定期的に内服してはいけないという事です。
処方する医師がその点をきちんと説明していないケースがありますし、効果が①や②の種類に比べて即効性があるので、ついつい患者さんも常用してしまうという背景があります。
以上、便秘薬について解説しました。
皆さんが普段飲んでいる便秘薬、どれに該当するか確認してみてください。
①や②に該当する薬剤なら問題ありません。
ただ、効き方には個人差がありますので、処方してもらった先生と量や飲み方について調整してもらってください。
③に該当する薬剤であった場合は頓用への切り替え、可能なら中止が望ましいです。
ただ、急に止めてしまうと便秘が悪化しますので、①や②の薬剤に切り替えていく必要があります。
便秘の原因は他にもいろいろありますし、大腸がんが原因であることもあります。
便秘でクリニックを受診することを躊躇する方もいますが、”たかが便秘、されど便秘”です。
最近では便秘により心臓疾患を引き起こすことも報告されているぐらいです。
当院では便秘外来としてお薬の相談はもちろんのこと、他の原因がないか(特に大腸がんの否定は重要)調べて、その原因に適した生活習慣の改善をご提案することもできますので、お気軽にご相談ください。
いさか内科・消化器内視鏡クリニック 院長 井坂利史
日本内科学会認定 内科認定医
総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
日本消化管学会認定 胃腸科専門医
日本ヘリコバクター学会認定 ピロリ菌感染症認定医
便秘の方は便秘で病院にかかるのもなあ・・と考え、薬局で市販されている便秘薬を飲んでいる方が多いかと思われます。
便秘薬には色々な種類があり、中には毎日飲んでいると、効果が落ちてきたり、逆に便秘を悪化させたりする種類もありますので、正しく理解して内服することが望ましいです。
今回は市販薬も含めた便秘薬について解説したいと思います。
まず、便秘薬は効く機序によっておおまかに ①浸透圧性下剤 ②上皮機能変容薬 ③大腸刺激性下剤に分けられます。
① 浸透圧性下剤
【酸化マグネシウム(マグミット)】
大腸内に水を引き込んで、便を軟化することで便通を改善させます。
日本では従来からよく使用されている薬剤です。
高齢者や腎臓の機能の低下した方には成分のマグネシウムが体内に蓄積することがあるので、注意が必要ですが、薬局でも手に入る安価なお薬です。
胃酸分泌を抑制する薬を飲んでいる人では効果が出にくいことがあります。
【モビコール】
水分子と結合し、そのまま吸収されずに大腸まで到達し、便を水でコーティングすることで排便を促す薬剤です。
欧米では以前から第一選択として使用されている薬剤です。
水以外のジュース、お茶、コーヒーなど何にでも溶解して構わない薬ですので、小児用として重宝されます。
また、上述したようにほぼ体内には吸収されないので、他の薬剤との相互作用も気にする必要がありません。
小児用のLDだけでなく、大人用のHDが2022年にラインナップされ、飲みやすくなりました。
【ラクツロース】
大腸で腸内細菌に分解された乳酸、酪酸などが大腸内の浸透圧を上げて、水分を腸内に引き込んで便を柔らかくします。
効果発現が穏やかで、透析患者に対しての有効性や安全性が確認されています。
②上皮機能変容薬
最近、開発された種類の薬剤になります。
【アミティーザ】
小腸の粘膜に作用し、腸管内への水分分泌を促進させて、便を軟化させます。
従来から使用されている酸化マグネシウムより効果が高いです。
小腸が拡張し、それが吐き気として若い女性にみられることがあります。
【グーフィス】
小腸(回腸末端)での胆汁酸の再吸収を阻害して、胆汁酸を大腸に多く流入させる機序です。
胆汁酸により大腸への水分分泌と蠕動運動が促進されます。
大腸の動きが遅延している方に効果が高いです。
悪玉コレステロール(LDL-C)を低下させる作用もあります。
【リンゼス】
これも腸管内への水分分泌を促進する薬剤です。
1日1回食前の内服で、腹痛も伴う便秘(便秘型過敏性腸症候群)の方に適しています。
効果が比較的強く、食後に内服すると下痢してしまう方もいます。
これらの薬剤は長期間使用しても依存性が無いので、毎日内服しても問題はありません。
問題は③の大腸刺激性下剤です。(市販薬の多くがこれに該当します)
大腸刺激性下剤には主に3つの成分があります。
・アントラキノン系・・センノサイド(センナ)、大黄(ダイオウ)
【センノサイド(センナ)を含む薬剤】
センノシド、プルゼニド、ソルダナ、アローゼン、アジャストA、ヨーデル、セチロ、スルーラック、新ウイズワン、コーラック、カイベール
【大黄(ダイオウ)を含む薬剤】
セチロ、大黄甘草湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、大柴胡湯、乙字湯、桃核承気湯、大正漢方便秘薬、タケダ漢方便秘薬、ハーブイン「タケダ」、ナイシトール
・ジフェニルメタン系・・ビサコジル
【ビサコジルを含む薬剤】
コーラック、ヒューラック、スルーラック、ラキサタン、カイベール、レシカルボン坐薬、テレミンソフト坐薬
・ジフェノール系・・ピコスルファートナトリウム
【ピコスルファートナトリウムを含む薬剤】
ラキソベロン、ピコラックス
何が問題かというと
これらの大腸刺激性下剤は連用すると腸の運動を障害し、排便の刺激を鈍感にさせ、便秘を逆に悪化させてしまう弛緩性便秘を引き起こします。
大腸にムチを打って無理やり動かすので、当初は効いていても、段々効かなくなってしまうとイメージしてもらうとわかりやすいかと思います。
この刺激性下剤が悪というわけではなく、飲み方が大事という事です。
具体的には、3日程度排便が無かったら内服するという頓用が正しい用法であり、毎日定期的に内服してはいけないという事です。
処方する医師がその点をきちんと説明していないケースがありますし、効果が①や②の種類に比べて即効性があるので、ついつい患者さんも常用してしまうという背景があります。
以上、便秘薬について解説しました。
皆さんが普段飲んでいる便秘薬、どれに該当するか確認してみてください。
①や②に該当する薬剤なら問題ありません。
ただ、効き方には個人差がありますので、処方してもらった先生と量や飲み方について調整してもらってください。
③に該当する薬剤であった場合は頓用への切り替え、可能なら中止が望ましいです。
ただ、急に止めてしまうと便秘が悪化しますので、①や②の薬剤に切り替えていく必要があります。
便秘の原因は他にもいろいろありますし、大腸がんが原因であることもあります。
便秘でクリニックを受診することを躊躇する方もいますが、”たかが便秘、されど便秘”です。
最近では便秘により心臓疾患を引き起こすことも報告されているぐらいです。
当院では便秘外来としてお薬の相談はもちろんのこと、他の原因がないか(特に大腸がんの否定は重要)調べて、その原因に適した生活習慣の改善をご提案することもできますので、お気軽にご相談ください。
いさか内科・消化器内視鏡クリニック 院長 井坂利史
日本内科学会認定 内科認定医
総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
日本消化管学会認定 胃腸科専門医
日本ヘリコバクター学会認定 ピロリ菌感染症認定医
正常な大腸粘膜
粘膜は肌色で血管も透けて見えます
大腸刺激性下剤の連用による粘膜
茶色の色素が沈着して、血管も見えません