グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



HOME >  院長ブログ >  ピロリ菌除菌における懸念点

ピロリ菌除菌における懸念点


いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長の井坂です。

今回は、日常診療の中でのピロリ菌の除菌における懸念点4つを述べたいと思います。
(ピロリ菌感染症に関しては当ホームページ内の”疾患から探す”から”ヘリコバクターピロリ菌感染症”、ブログ”ピロリ菌は内視鏡で見えるの?”で解説していますので、是非ご一読ください。)

① 除菌治療薬を飲んだが、効果判定を行っておらず成功したのか不明
② 推奨されていない方法で効果判定されており不正確
③ 除菌後の定期的な胃カメラでのフォローができていない
④ 以前、陰性といわれている人の中に実際は陽性者がいる

それぞれ説明していきます。
① 除菌治療薬を飲んだが、効果判定を行っておらず成功したのか不明
一般的には除菌薬を飲み切ってから2か月程度経過して効果判定を行います。
そのことを忘れてしまって、判定のための検査をせずに、飲みっぱなしというケースがあります。
除菌成功率は70~90%ですのでおおよそ成功しますが、逆に言えば10%~30%の確率で不成功ですので、決して稀ではありません。
きちんと効果判定するまでが除菌治療ですので必ず受けましょう。
当院では除菌治療の案内時に効果判定の検査の説明も詳しく行います。
なお、通常より長めの3か月目に効果判定をすることで、より正確に判定しています。

② 推奨されていない方法で判定されており不正確
ピロリ菌の感染診断には様々な方法がありますが、効果判定に適している検査は尿素呼気試験と便中抗原検査です。
それ以外の採血による抗体検査や胃カメラでの組織検査で判定している場合も少なくありませんので、どういった方法で効果判定されたかは覚えておいてください。
なお、除菌に成功した人が、ドックのオプションでピロリ菌の抗体を調べて陽性と指摘され、また感染したのか?もしくは除菌出来ていなかったのではないか?という問い合わせがあります。
抗体はピロリ菌という抗原に対する免疫反応で産生されるものであり、除菌後もしばらく体内に残っています。
従って、前述のように効果判定には向かないわけですが、(抗体の数値で判定することはある)その点を理解していないと結果として混乱してしまうことになります。
(ブログ”胃がんリスクを調べるABC検診とは?”で関連内容を記載しています)

③ 除菌後の定期的な胃カメラでのフォローができていない
“ピロリ菌が消えたから、今後胃がんにはならないだろう”といった勘違いからその後の定期的な胃カメラを受けなくなってしまうことがあります。
確かに除菌が成功すると胃がんの発生リスクは1/3に低下しますが、全くのゼロにはなりません。
除菌が成功すると胃炎の活動性の改善がみられますが、除菌した時の年齢が高齢であればあるほど、胃粘膜の萎縮(老化)がずっと残ることが多いとされています。
胃がん発生の直接的な原因はピロリ菌の有無ではなく、ピロリ菌による炎症による萎縮性変化と遺伝子変異の度合いになりますので、ピロリ菌除菌が成功した方こそ、定期的な胃カメラを受けてしっかりと胃がんの早期発見に努めるべきです。
当院では“除菌成功しました”という結果の説明時に、この点を特に強調しています。
除菌が成功したことで胃がんのリスクがなくなったと勘違いして、以後の胃カメラを受けず、数年後に進行がんで見つかるということは絶対に避けたいことです。

④ 以前、陰性といわれている人の中に実際は陽性者がいる
ピロリ菌陰性の解釈には
A もともとピロリ菌に感染していない真の陰性の場合
B ピロリ菌に感染していたけど、萎縮・腸上皮化生が進行してピロリ菌がいなくなった場合
の2つがあります。
Aの場合は基本的には胃がんの発生リスクは低いです。
ただし、逆流性食道炎になりやすく、これに関連したバレット食道腺癌に気を付ける必要があります。
Bの場合は実は胃がんが発生するリスクが最も高い状態です。
ピロリ菌によって胃の粘膜が荒廃して、焼け野原の状態になってピロリ菌自体が住めなくなってしまった状態をイメージしてください。
この状態は自然除菌や偶然除菌といった表現を使用したりしますが、除菌薬を飲んで除菌した人と同様もしくはそれ以上に厳重なフォローを必要とします。
内視鏡を一度受けて頂ければ、どちらの陰性であるかは判断できます。
ドックのオプションなどで内視鏡はせずにピロリ菌抗体のみを調べて陰性だったから大丈夫と思っている方は、一度は内視鏡を受けることをお勧めします。
それによって真の陰性であることを確認できたのなら、まず胃がんのリスクは低いと考えてもらっていいです。
(ブログ”胃がんリスクを調べるABC検診とは?”で関連内容を記載しています)

以上、今までピロリ菌に関する診療をしてきて感じている懸念点を説明しました。
ピロリ菌除菌の最大の目的は胃がん撲滅です。
そのためには、予防としての除菌治療、早期発見としての定期的な内視鏡検査の2点が大事になってきます。
是非とも一度は経験豊富な内視鏡専門医のいる施設で内視鏡検査を受け、まずは自分の胃にピロリ菌がいるのかいないのかだけでも調べてもらってください。
当院では、内視鏡検査実施後にすぐ結果を説明しています。
ピロリ菌の感染を疑う所見があれば、感染の有無を確認する検査をご提案し、陽性であれば速やかに除菌治療を行います。
その後は個人個人にあった検査間隔の提案や以後の生活の注意点などを説明しています。

現在、胃がんは早期の段階で見つかれば、高確率で治癒できるまでになっています。
過度に恐れず適切な対応をしていくことで撲滅も夢でないと考えています。

いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長 井坂利史

日本内科学会認定       内科認定医
               総合内科専門医 
日本消化器病学会認定     消化器病専門医  
日本消化器内視鏡学会認定   消化器内視鏡専門医 
日本消化管学会認定      胃腸科専門医 
日本ヘリコバクター学会認定  ピロリ菌感染症認定医

ピロリ菌の除菌は1週間お薬を飲むだけです