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ピロリ菌が胃がんだけでなく大腸がんにも関与?!


いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長の井坂です。

今回は論文を一つ紹介したいと思います。

Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年3月1日号にてアメリカから
“ピロリ菌は、大腸がんの発症および死亡と関連している可能性があり、未治療の人、とくに活動性の感染が検出された人が最もリスクが高いようである”という論文が掲載されました。
ヘリコバクター・ピロリ菌は胃がんリスクの最大因子であり、除菌治療がその予防に繋がることは周知の事ですので、今までのこのブログでも何度も説明してきました。
今回は、このピロリ菌が“胃がん”だけでなく“大腸がん”にも関与している可能性を報告したことになります。

内容を簡単に紹介します。
解析には、1999~2018年に退役軍人健康管理局でピロリ菌検査を行った退役軍人のデータが用いられました。
結果は以下の通りです。
・ピロリ検査を受けた81万2,736人のうち、陽性は20万5,178例(25.2%)であった。
・陰性群と比べて、陽性群では大腸がん発症リスクは18%高く(調整ハザード比[aHR]:1.18、95%信頼区間[CI]:1.12~1.24)、死亡リスクは12%高かった(aHR:1.12、95%CI:1.03~1.21)。
・除菌治療を受けた群と比べて、治療を受けていない群では大腸がん発生リスクは23%高く(aHR:1.23、95%CI:1.13~1.34)、死亡リスクは40%高かった(aHR:1.40、95%CI:1.24~1.58)。
これらの結果より、研究グループは「ピロリ菌陽性は、大腸がんの発症および死亡と関連している可能性があり、未治療の人、とくに活動性の感染が検出された人が最もリスクが高いようである」とまとめています。

胃の粘膜に生息しているピロリ菌が大腸の粘膜に影響を及ぼすメカニズムはまだはっきりとはわかっておらず、今後の検証を待つことになりますが、少なくともピロリ菌の除菌は胃がんだけでなく大腸がんの予防にも繋がる可能性を示唆しており、より積極的に除菌が推奨されると考えていいでしょう。
また、ピロリ菌の除菌をした方は胃カメラだけでなく大腸カメラによる定期的な検診も受けた方がよさそうです。

Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology. 2024 Mar 01;JCO2300703. doi: 10.1200/JCO.23.00703.

いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長 井坂利史
日本内科学会認定       内科認定医
               総合内科専門医 
日本消化器病学会認定     消化器病専門医  
日本消化器内視鏡学会認定   消化器内視鏡専門医 
日本消化管学会認定      胃腸科専門医 
日本ヘリコバクター学会認定  ピロリ菌感染症認定医

ピロリ菌が人類に及ぼす影響については興味が尽きません・・