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シメサバを夕食に食べて数時間してから腹痛が・・~アニサキス奮闘記~


いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長の井坂です。

皆さん、お刺身やお寿司は好きですか?
自分も大好きです。
ただ、これらの生魚の内臓にはアニサキスという虫が寄生していることがあるのはご存知ですか?
本ホームページの”疾患から探す”に簡単に説明していますが、今回は実体験(といっても妻ですが)を含めてお話ししたいと思います。

ある日の夕食にスーパーで買ったごく普通のシメサバを家族で食べました。
サバといえばアニサキスが寄生している魚の代表格です(他にはアジ、サンマ、カツオ、イワシ、サーモンなど)ので、これらを焼いてない状態で食べる時は魚をよく見てから食べるように心がけていました。
深夜、妻が嘔気と間欠的な(症状の程度に波がある)みぞおちの痛みを訴え出しました。下痢はありません。
この経過で胃アニサキス症をすぐに思い浮かべました。
胃アニサキス症はアニサキスに対するアレルギー症状ですので、原因となるアニサキスを取り除くことが治療の基本です。
ただ、その時点で深夜ですので、病院となると救急病院にかかるしかありません。
受診したとして、当直医が胃アニサキス症を疑って内視鏡を選択してくれればいいのですが、ただ胃薬を出されただけでは受診の意味がありません。
しかも、内視鏡をできる医師が深夜の当直帯の院内にいない可能性も高い。
かといって、私が出しゃばって”胃アニサキス症を疑いますから、内視鏡をすぐにお願いします”とか言ったら、煙たがられます・・。
これらを頭の中で考え、この夜中は痛み止めでしのぎ、明日の朝イチで自分が内視鏡をしてアニサキスを除去しようと決断しました。
妻もこの提案を受け入れ、夜中は苦しみに耐えてくれました。
朝を迎え、当時勤務先であった病院に連れていき、自ら内視鏡を実施しました。
すると胃の粘膜に頭を突っ込んでいる見慣れたアニサキス虫体を見つけました。しかも寄り添うように2匹!
すぐさまこれら夫婦アニサキスを順番に摘出。症状は速やかに軽快しました。

以上、(妻の)アニサキス実体験でした。
アニサキス(正確には幼虫)は長さ2~3㎝の白い糸状の形をしていますので、肉眼で見えます。
やや鮮度の落ちた魚ではアニサキスは内臓から筋肉(身)に移動してくると言われています。
よって魚を生で食べる際はよく観察することをお勧めします。
(ただ、お店で食べる際にはあまりジロジロ観察するのは気が引けますが・・)
不十分な冷凍や不十分な加熱、酢漬け、塩漬け、醬油やわさびをつけただけではまだ生きています。
症状を緩和させる薬はあっても特効薬はなく、アニサキスを摘出するしかありません。
このブログを読まれた方で今後、同様の経過をたどったら、受診した病院で胃アニサキス症を疑ってもらうよう“お寿司やお刺身を食べた”“みぞおちの痛みに波がある”“下痢はない”“じんましんも出てきた”とお伝えてください。
胃薬・整腸剤を処方されただけではよくなりませんから。
なお、受診の際には絶食でかかることをお勧めします。
胃の中に食べ物があると緊急胃カメラをしてあげたくてもできないのです。

開業後のクリニックでも、胃アニサキス症を疑った患者様を受診当日に内視鏡を行ってアニサキスを確認。
すぐに摘出し、その直後から”楽になった”という反応を頂いています。

以上、まとめますとアニサキスは
① まずは担当した医師に疑われること
② その施設が内視鏡がすぐにできる体制であること
③ 患者さんが絶食であり内視鏡が可能であること
この3点が揃わないと迅速な治療に結び付きません。
是非覚えておいてください。

余談ですが、妻はこの後にまた胃アニサキス症になっています(まさに喉元過ぎれば熱さを忘れる・・です)

いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長 井坂利史

日本内科学会認定       内科認定医
               総合内科専門医
日本消化器病学会認定     消化器病専門医  
日本消化器内視鏡学会認定   消化器内視鏡専門医 
日本消化管学会認定      胃腸科専門医 
日本ヘリコバクター学会認定  ピロリ菌感染症認定医

白い糸状の虫体が胃の粘膜に食いつています

頭を残さないように慎重に摘出しました