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便秘が寿命を縮める?!


いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長の井坂です。

今回は”便秘が生命予後に影響する”という論文結果を2つご紹介したいと思います。

まず一つ目は2010年にアメリカから報告されたやや古い論文ですが、便秘のある人とない人を15年間追跡したところ、便秘のある人はない人と比較して15年後の生存率が2割以上悪化したという結果を報告しています。

その理由は様々ですが、最も大きな原因は排便時にいきむことで血圧が急上昇し、心臓(心筋梗塞)や脳(くも膜下出血)、血管(大動脈瘤破裂)などの疾患を引き起こすことに繋がっているのではないかと報告されています。
実際に高齢者では排便時のいきみで収縮期血圧が30mmHg以上も上昇すると報告されており1)、寒い冬の早朝に冷たい便座に座っていきんだ場合には安静時に比べて最大60mmHg以上も上昇するとも言われています2)
これは平素の血圧が140mmHgぐらいの人では200mmHgに達する上昇であり、極めて危険と言えます。
以上のことから、いきむことなく自然に排便できるような便秘対策が重要と言えます。

次に2つ目の論文になります。
これは「American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology」に2024年9月24日とつい最近に掲載されたオーストラリアから報告された論文で“便秘は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める可能性がある”と新たな研究で報告しています。
この研究では、便秘のある人における主要心血管イベント(MACE)の発生リスクは、正常な排便習慣を持つ人より2倍以上高いことが示されたとしています。
便秘の人でリスクは、心不全(OR 2.72)、脳梗塞(同2.36)、急性冠症候群(同1.62)の順で高かったとしています。
また、15万7,414人に高血圧の診断歴があり、このうちの8.6%(1万3,469人)は便秘を伴っており、便秘のない高血圧患者と比べて、便秘のある高血圧患者でもMACEのオッズは有意に高く(OR 1.68)、MACEの発生リスクは34%高いことが示されました。

以前から“便秘は生活の質:QOLの低下は招くが、生命予後には影響しない”といわれてきましたので、便秘に対しては私たち医師もたかが便秘というように真剣に向き合ってこなかった経緯がありますが、これら2つの論文からそういった考えを見直すべきだと言えます。

当院ではいきむことなく排便できる“バナナ状の便=ブリストル便形状4番”を目指すことを意識し、刺激性下剤の使用からの脱却を目指した便秘外来を行っています。
詳細な問診の結果をもとにした生活習慣の改善と各種便秘薬の使い分けによるコントロールを行い、場合によっては採血検査や大腸カメラによる精査を行い、便秘の背景にある疾患も診断しています。

たかが便秘、されど便秘です。
便秘ぐらいで受診していいのかなと思っている方こそお気軽にご相談ください。

いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長 井坂利史

日本内科学会認定       内科認定医、総合内科専門医 
日本消化器病学会認定     消化器病専門医  
日本消化器内視鏡学会認定   消化器内視鏡専門医 
日本消化管学会認定      胃腸科専門医 
日本ヘリコバクター学会認定  ピロリ菌感染症認定医

文献
1)赤澤寿美、他:高齢者における日常生活動作中の血圧変動-とくに入浴と排便の影響について-自律神経、37:431-439,2000
2)Tochihara Y,et al:Effects of Room Temperature on Physiological and Subjecyive Responses to Bathing in the Elderly. J Hum Environ Syst,15:13-19,2012