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突然襲われるつらい嘔吐・下痢~感染性腸炎~


いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長の井坂です。

2025年2月現在において新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス感染症はやや減り、逆に増えてきた感のあるのが感染性腸炎、いわゆる嘔吐下痢症です。
今回は誰しもが一度は発症したことがあると思われるこの感染性腸炎について解説します。
嘔吐・下痢といった症状で突然発症しますが、ほとんどは軽症で軽快する疾患です。
ただし、注意点もありますので、正しく理解していただけたらと思います。

【原因】
● ウイルス
ノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルス・エンテロウイルス・アストロウイルス・B型インフルエンザウイルス・新型コロナウイルス(まれ)
● 細菌
サルモネラ菌・カンピロバクター菌・腸管ビブリオ・腸管出血性大腸菌(O-157)・細菌性赤痢・コレラ・腸チフス・黄色ブドウ球菌・エルシニア菌・ウェルシュ菌など
● 寄生虫
赤痢アメーバ症・クリプトスポリジイウム症・回虫症など

一般的に夏は細菌性腸炎が、冬から春の今の時期ではウイルス性腸炎が多い傾向にあります。

【感染経路】
● 汚染された水
十分消毒されていない水を飲んだ
● 食品からの感染
十分加熱されていない食品を食べた
● 感染患者からの糞口感染
感染者の吐物に触れた。トイレのドアノブから感染した
● 汚染された食器を介した感染
感染者と食器器具を共有した

【原因となる食事】
● ノロウイルス
カキを含む二枚貝・魚介類など
● ロタウイルス
二枚貝・寿司・サラダ(海外の報告)など
● カンピロバクター菌
鶏肉(鶏レバーやささみなど)・加熱が不十分な食肉・汚染された飲料水など
● サルモネラ菌
卵やその加工品・鶏肉・食肉・内臓肉・淡水養殖魚介など
● 黄色ブドウ球菌
古くなったおにぎりや弁当など
● ウェルシュ菌
作り置きしていたシチューやカレーなど

【症状】
● 吐き気・嘔吐
通常、最初に見られる症状です
● 下痢
ウイルス性腸炎は、水様便の事が多く、O-157では血便が出てくることもあります。
● 発熱
ウイルス性胃腸炎の場合は、多くの場合37度台であることが多いですが、カンピロバクター性腸炎、ノロウイルスなどは38度にまで達することがあります。
● 腹痛
全体的によくなったり、悪くなったりと波がある腹痛です。

【対処法】
感染性腸炎には特効薬はなく、ほとんどが軽症で自然治癒する疾患ですが、以下の点に留意してください。

① 脱水にならないように水分と栄養の補給を十分に行う
脱水は症状を悪化させますので、こまめに水分を摂ることが大事です。
● 冷たい飲み物は下痢を誘発しますので、常温~温かい飲み物を飲んで下さい。
● 経口補水液がベストです。
すぐ手に入らない場合には、水1,000mlに砂糖40グラム、食塩3グラムを混ぜて自宅でも作ることができます。
● 少量ずつ時間をかけて飲んでください。
おちょこ程度の少量を何度も何度も繰り返して飲んでください。
● 水分を飲んでも嘔気がなければ、消化しやすいバナナ・ゼラチン・お粥などを少しずつ食べてください。
● ミルクや乳製品・カフェイン・アルコール・脂肪の多い食事や濃い味付けの食事は控えてください。

②  周りの人にうつさないようにする
感染性腸炎は感染者の便や吐物の接触や吸入で感染が広がりますので、感染拡大防止がとても大切です。
特にノロウイルスはその感染力が強いとされています。(ノロウイルスに関しては次回のブログで詳しく解説します)
● 吐物の処理にはマスク・手袋を用いる
● 石鹸と流水による手洗いを徹底する
● 食品は中心部までしっかり加熱処理する
● 調理器具は消毒用エタノールや逆性石けんなどを用いて消毒する。
(ノロウイルスには次亜塩素酸ナトリウムが有効です)
● トイレ・風呂などの共用部分を衛生的に保つようにする
● おむつなどの取り扱いに気をつける

③  医療機関を受診するタイミング
ほとんどが軽症のまま軽快しますが、点滴や抗生剤が必要となる時もあり、まれに重症化することもあります。
以下のような事がありましたら、医療機関を受診してください。

● 嘔吐が2日以上続いてほとんど水分が摂れない
● 下痢が3日以上続く
● 血便が出た
● 38℃以上の高熱が続く
● 腹痛がひどくなってきた
● 意識障害が出た(この際は救急車で救急外来を)

【登校や仕事の復帰時期】
感染性腸炎は明確な出席停止期間はありません。
一般的には症状が回復して状態が良くなれば登校・登園は可能となっていますが、各自治体や学校で異なることがありますので、幼稚園・保育園や学校、職場に前もって問い合わせてください。
特に食品を扱う職場では就業規則で厳重に管理されている場合があります。
因みに、便には2週間程度ウイルスが混在していると言われています。(1か月との報告もある)
それらを水で流すと、水の粒に紛れて空気中にウイルスが拡散されてしまいますので、少なくともトイレの蓋は閉めてから流す、手洗いを徹底するといった二次感染予防の意識をもっておきましょう。

いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長 井坂利史

日本内科学会認定       内科認定医、総合内科専門医 
日本消化器病学会認定     消化器病専門医  
日本消化器内視鏡学会認定   消化器内視鏡専門医 
日本消化管学会認定      胃腸科専門医 
日本ヘリコバクター学会認定  ピロリ菌感染症認定医

嘔吐、下痢で脱水の際には点滴が有効です